合併で相互補完
いわき電気工業(いわき市)
平電気と末永電気が対等合併
 建設投資は、平成9年度以降減少傾向が顕著となり、建設業を取り巻く経営環境は急速に悪化している。
 公共・民間を合わせた建設投資の総額は、平成4年度の約84兆円をピークに年々減少し、平成14年度は約57兆円になるものと予測されている。建設投資の減少率は、平成8年度からの6年間で約31%に達する。
 一方、建設業の許可業者数は、平成14年3月末で約57万1,000社であり、平成4年3月末比で9.4%増となっている。建設投資の急速な縮小の中で、全体として供給過剰であるため建設業の収益性は大きく低下し、倒産件数も増加している。建設投資が将来大きく回復することが期待できない状況にある中、市場を通じた淘汰と建設業の再編で過剰供給構造の是正を図ることが重要課題とされている。
 そうした中、国土交通省は平成14年12月、「建設業の再生に向けた基本指針」を策定、産業再生に向けた施策の基本指針を明らかにして、建設業の再編を促進したいとしている。
 経営統合の再編は、企業にとって多くの労力を必要とする上に、入札参加機会の減少等のマイナス面もあることから、公共工事の入札参加資格審査において点数の加算措置が取られている。国、県とも3年未満まで15%、3年以上5年未満まで10%それぞれ加算している。
 地域の中小建設業者は、家業としての「のれん」の維持のため、再編がなかなか進まないのが実態である。
 こうした中、いわき市の平電気工事?(長谷川昇一社長)と末永電気工事?(末永英隆社長)が対等合併し、いわき電気工業?を15年2月25日付で正式に設立した。役員は代表取締役社長に末永英隆氏、代表取締役副社長に長谷川昇一氏が就任、資本金は4,200万円、従業員56名(うち一級電気工事施工管理技士10名)、決算期は5月31日、本社はいわき市平字五色町9-5(前平電気工事内)、総務部はいわき市平塩字中島12-16(前末永電気工事内)に置く。


<ガッチリと握手する末永社長(右)と長谷川副社長>


経審加算措置で電気工事のトップクラスへ

 両社の完成工事高は、14年5月期で平電気工事が5億937万円、末永電気工事が3億9896万円となっており、両社の合計完成工事高は9億733万円。また、経審点数でも合併の加算措置で大きな飛躍が考えられ、県内トップ規模の電気工事会社となることが予測される。
 両社の場合、平電気工事は東北電力の送電工事及び通信工事が強く、末永電気工事は官公庁の内線工事が強いという特徴を持っている。両方の得意、不得意を補える会社の合併で、理想的な再編となっている。
 地域の中小建設業者は再編・統合の必要性は理解していても、それをなかなか実践できないのが実情。国や県からも後押しされ、様々な優遇措置が講じられても決断するのは難しい。
 福島県内では、白河市の福島県南土建工業、共栄建設、小野組の3社合併による「福島県南土建工業」、福島市の大槻電設工業と吉田電工との2社合併による「大槻電設工業」に続き、県内で3番目の合併となる。
 前2例はどちらかと言えば吸収合併の色合いが強いが、今回の合併のケースは、合併後の会社名も全く新しい会社名とし、文字通りの対等合併となっており、両社社長の英断は高く評価されるものである。
 末永社長は「これから先々の工事量の減少に対応するために、2~3年前から考えていた。両社が元気で体力があるうちに合併し、財務内容の強化を図ると共に社員の意識改革を進め、21世紀に残れる企業を目指したい」と語る。

先駆事例に協会も支援

 また、県電設業協会の松崎勉会長は「国、県が中小企業の再編・合併を推進しているが、現実は大変難しく両社社長の決断に敬意を表している。両社は東北電力、官公庁を主力とするそれぞれの特徴を持っており、うまくいくと思う。協会としても全国の中小建設業の再編・合併の模範となれるようできる限り支援をして行きたい」と電設業界における先駆的な役割が果たせることを期待している。
 県内におけるこれまでの合併例は、同一地域で同一業種による合併となっており、他地域との合併や業種別との合併はまだ行われていない。今後は、他地域や異業種との合併による新しい建設産業の形態を模索して行くことが期待されている。
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