木造住宅 自社の大工で品質追求

福島市の大木工務店(024-534-3214)

佐藤悦夫社長
■大工を指名できる会社
 経営効率化策として、人材のアウトソーシングや下請の活用は、今や当たり前のことになっているが、(株)大木工務店の佐藤悦夫社長は、自社の人材にこだわり木造住宅の品質を追求している。
「うちの親父(先代社長)が大工で、弟子を育てながら仕事をしてきました。その弟子が育って、一人前の技量を身につけたときに会社を興したという経過があります」。
“一人前の技量”という人材評価を重んじている。事業量が多かった時には、15人の大工を抱えていたが、定年退職などがあって、現在の木造建築部門は8人(1人は女性で国体のサッカー選手)。プラス弟子、若い者で見習い(経験一年弱)が一人の9人体制だ。腕の立つ大工を手元に置く形にしている。
 同社のホームページには、この八人の大工が顔写真入りで紹介されている。
 顧客に対しては「自社の大工であり、技量は分かっているので安心して任せてほしい」と説明。同社のことをよく知っている顧客やホームページを見た人から、大工を指名されるケースも多いという。情報開示が、顧客に安心感を与えているようだ。
 「自社の大工がいるということは、仕事が多いときには非常に機動力があります。また、一人ひとりの能力が把握できていますから、この人には何をやらせれば良いかが、良く判るんです」と振り返り、「下請で大工を頼む方が経営的には楽だが、外注にすると、どうしても技量が落ちるし、品質を保証できません。8人の大工は、会社のことを良く解っているし、我々も彼らのことをよく解っている。彼らの仕事が当社の品質保証です」と語る。
■品質を握るのは現場の大工
 木造住宅の場合、全体の八割程度に大工の手が掛かる。品質を落とすのも上げるのも大工だ。いくら管理しようとしても、一日中ついているわけにはいかないから、大工が手を抜こうとすればできる。「手抜きのない仕事というのは、現場に出る大工と我々経営側との信頼関係に基づくものであり、大工の生活を保障することが基本です。それを下請にしたり、手間賃を切ったりすると『見ていないんだから、手を抜いてしまえ!』となる」と慎重な見方だ。
 「施主からいくら値切られても、大工の手間を切ったらだめ。品物を買うときに値切るのは当たり前だが、手間を切ってはいけない。それは自分(会社)の首を絞めるのと一緒で、手抜きは後で必ず問題になる。見えないところこそ大切にする技量と倫理の両方が必要だ-と強調する。
 「今まで、値段ばかりが取りざたされて品質がおざなりにされたように思う。安いものがもてはやされてきた中で、構造計算偽装の問題が起きた。ようやく品質の方も注目されはじめて、我々にとっては良い材料。資材の価格は業者の購買力で異なるが、それでも限度がある。値段を下げるためには、大工の手間もカットすることになるが、これでは品質が落ちる。低価格の家の設計では、施工を簡略化して十分な技量を持たない大工でも工事ができるようにしている例がみられる。大工(だい九)ではなくて大六(だい六)くらいの技量しかないから、手間もそれなり。施主となる人にはそのことを解ってほしい」と指摘した。
 同社では、月曜の朝に全員で朝礼を行い、安全管理に努めている。会社の幹部が、労災事例や労働安全・現場管理に関する話を聞く時間だ。「職人さんは、どうしても現場サイドの話だけになりやすいが、客観的な安全に関する情報も重要なんです」と自らも指導に力を入れている。
■若手を鍛えるベテラン
 同社では、通常材料をプレカットで刻んでいるが、この冬は「たまたま暇があったので自社で刻んでいる」そうだ。ベテラン大工の指導の下、若い者に墨付けさせて、木造の一棟を刻んでいる。「工場で刻んできた材料を組み立てれば良い-ということではいけない。大工の目で見て、ここはおかしいということだってあるかも知れない。そういう目を持つためには、自分で刻んだ材料を組み立てることが必要だと思う。リフォームや耐震改修を行うときにも役に立つ経験です。自分で刻むことで、木造に対する愛着が出る、責任も感じると思う」と語る。ものづくりの原点を考えている。

株式会社 大木工務店
福島県福島市南中央一丁目51-2
ホームページ http://www.fp-ooki.co.jp
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