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中山間地に生きる
農業生産法人を設立
食を通した人の交流とブランド産品の創造
田島支部 福南建設(株)
代表取締役 羽田 正(TEL 0241-62-4124)
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■耕作面積を2倍に■ |
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農業分野へ進出したのは、14、15年も前だ。当初は10ヘクタールの遊休農地にソバを作付けるところからスタートし、その後5年ほどで20ヘクタールを超えるまでになった。今年からは、さらに20ヘクタールの遊休農地を借地して、栽培面積を拡大し、ソバだけではなく地元名産の「田島アスパラ」の栽培をはじめた。作柄も良く来年からは一定量の収穫が期待できる-と語る。
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羽田 正 氏 |
社長の羽田正氏は福島市の農家出身で、高校では農業土木を学び土木会社のサラリーマンとして働いた。周囲の勧めもあって昭和57年に独立、舗装工事を主力とする福南建設を設立した。昭和60年代は、建設工事量が多かった時代で、同社は、一つの学校で約1万平方メートルに及ぶグラウンドを整備するため、農業用の50馬力の大型トラクター(トラクターの価格は10馬力百万円といわれる)を購入した。ソバの需要が高まるとの将来展望、そしてこのトラクターの稼働率を上げるため、遊休農地の開墾、畑の耕運、そしてソバの栽培へと取り組みを進めた。
しかし、これまでを振り返って「中山間地における農業は、単なる経済行為(商売)として見ることはできない」と語る。
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■機械力の保持と補助金がカギ■ |
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「農業というのは季節で物事を進める仕事だ。作業の要となる農業機械は、レンタルすることができない。生産規模を拡大しようとすれば、新しく機械を入れなくてはならないが、その機械を年間50日も60日も使えるわけではない。規模拡大には機械力という点で限度がある。作物の種類を変えた規模拡大は可能だろうが、別の作物で使ってきた機械が使えないことも多い。これが、日本の農業の弱さじゃないかと思う」という。
一台のトラクターとコンバインで耕作できるのは、20ヘクタールから25ヘクタール。収穫したソバの売上は、高値で700万円から800万円になったが、年によって波があり収穫量が半分の年もあった。機械は、トラクター、コンバインの他に乾燥施設、輸送のための運搬車も必要だ。これに飼料や人件費が加わる。「コンバインだけで1300万円もするのだから、どんなに頭の良い人が考えても商売になるはずがない。昔からうっすらとは分かっていたが、農業を続けていくためには補助金が必要だ。今はつくづく思う」と言う。「国が農業に対する補助金を増やさなければ、食糧自給率をあげることはできない。これが現実だ」とも…。
遊休農地は、耕作放棄地でもある。福島県は、こうした耕作放棄地が全国的にも多いところだが、中でも南会津での割合は高く旧田島町内だけでも150ヘクタールあると言われている。長い間放置されたところは、木や草が生い茂る荒れ地と化しており、今年、開墾した場所は草や木を除けて抜根したあと、トラクターで3回耕さないとソバの種がまけなかった。

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南会津町大字中荒井字小桂地内のソバ畑(2005年) |
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■地域ブランドへのこだわり■ |
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耕地の整備や建設業が暇な時期、それに収穫期などでは、これまでも福南建設の社員を動員してきたが、生産規模の拡大を図るために平成16年8月、農業生産法人・FKファームを設立した。羽田氏が代表を務め、農業専業の社員が3名いる。コンバイン購入のため補助金を申請し、受理された。この秋、収穫するソバは、FKファームのブランドで出荷する。しかし、田島のソバを地域ブランドにしていくためには、収穫量を上げ市場の一角を占めなくてはならない。流通を整えていく必要もある。「役場の方や地域の仲間とも話し合っていきたい」と語る。
また、ソバ以外の作物として今年から、市場で評判の良い「田島アスパラ」の生産を始めた。身体に良いとされる雑穀についても作付けを検討している。「アスパラは1.7ヘクタールほどに作付けし、来年からは相当量の収穫が見込まれるが、自社では選果ができないため、農協の施設を使わせてもらうことになる。田島で収穫していながら会津若松に持っていかなくてはならない。しかし、会津若松で選果をすることで会津ブランドになってしまう。農協という大きな組織の中で田島ブランドを確立していくことは難しい。地産地消、地域活性化を考えれば地域ブランドの育成が必要なはずだが、経済力や組織力を持たなくてはできない」。当面の課題は、はっきりしてきた。
建設業の力で遊休農地を解消する。そして、元気な高齢者の力も借りながら作物の管理や収穫時期を乗り切る仕組みが、この地域にとって重要と見ている。
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■きれいな空気と水の力■ |
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農産物でも、トマトやイチゴのように工場のような施設で生産できるものもある。しかし「空気が良くて水が良くて、無農薬の露地栽培農業が中山間地の生きる道だと考えている」と語る。林間学校や体験型農業による交流人口の拡大も、重要な地域活性化であり、農業の振興には欠かすことができないと言う。
「自家用の野菜を有機栽培でつくっている人は結構多い。キュウリやトマトなど味は、市販品とは全く違う。消毒したかどうか、自然の恵みが何なのか、味ではっきり分かる。そうした野菜を都市部の消費者が分かってくれて販路が拓ければ、中山間地の農地の利用価値は認められるだろう」と展望する。
本当に良いものを求める生活者は増えている。源流地点のうまい空気とうまい水、農産物。これを地域活性化の出発点にしたい-と説いている。
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