介護分野に参入

庄司建設工業(株)
南相馬市原町区青葉町1-1(TEL 0244-22-1111)
 南相馬市原町区の庄司建設工業(株)(庄司公正社長)が介護事業に参入する。庄司社長=写真=をトップとする(株)福祉ケアサービスを設立し、同区内にデイサービスとグループホームの2本柱で構成する「くにみの郷」を建設中で、2007年4月中旬完成、5月初旬のオープンを目指している。南相馬市を代表する企業が満を持して福祉事業に進出、業界の注目はもちろん、介護に悩む市民から大きな期待が寄せられている。

 

■認知症対応のデイサービス
 通所介護事業を展開する「デイズくにみの郷」の施設規模は、鉄骨造平屋建て325・7平方メートルで、癒しを演出する中庭を中心に、機能訓練室や談話室、浴室などの利用者スペースのほか、事務所などの管理スペースを機能的に配置している。
 施設の大きな特徴は、定員25名のうち、一般利用者の定員を15名に設定し、残る10名分を認知症の利用者に充てたこと。全国的にも地域的にも認知症のお年寄りが増えている現状を敏感にキャッチし、時代の要請に応え、施設の特色づくりにも役立てている。
 認知症対応型共同生活介護事業を行う「ホームズくにみの郷」は、鉄骨造平屋建て728・7平方メートル。定員は9名ずつの2ユニットで合計18名、居室はすべて個室タイプとし、専門スタッフの補助のもと、お年寄りが快適な共同生活を送る予定だ。

■住宅地の真ん中に建設
 建設地は、同区国見町地内の敷地約3700平方メートル。「地域ぐるみ、地域に根ざした介護」を実現するため、あえて住宅地の真ん中を建設地に選んだ。介護や認知症の問題を地域全体で考えてほしいとの思いから毎月地域に配布している「介護と耳より情報紙・くにミニ」=写真=は、現在までに10号を数える。積極的な情報発信が功を奏し、最近では、地元から介護ボランティアについての相談を受けるなど、地域の期待を肌で感じられるようになったという。

介護と耳より情報紙・くにミニ
■介護事業で地域に貢献
 同社では、5年ほど前から介護事業参入へ向けて検討を開始した。ノウハウもなく手探り状態だったのに加え、許認可などさまざまな制約の壁に突き当たり、まったく畑違いの業界への進出の難しさを実感、一時検討を保留していた。しかし、公共事業が右肩下がりで減少を続ける中、2年前から再検討に着手し、事業化へ向けて本格的に動き出した。
 庄司社長は「決して儲かる商売ではないし、まして建設業の片手間でできるものではないことがよく分かった」と厳しい現状認識を示す。
 しかし、勉強を続ける中で、施設整備が追いつかず待機者が増え続けている現状や、要介護者を抱える社員の悩みなどを聞くにつけ、利益は見込めないが、自分たちが介護をやることが地域貢献につながると、自然に思えるようになったという。また、23名のスタッフ全員を新規に採用するため、「雇用の面でも地域にお返しできる」との考えもあった。
■今後は長期的に検討
 今回の「くにみの郷」以降に、さらなる事業展開はあるのだろうか。庄司社長は、「求めている人が多いのは分かっている。長期的に検討していきたい」と話す。
 同社の取り組みは、まだスタート台にたったばかり。南相馬の企業の雄として「庄司建設が介護をやるなら安心だ」と言ってくれた地域の人たちの信頼と、同社に期待する声がさらに大きくなれば、第2弾も現実味を帯びてくるのだろう。
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