地域資源を観光に生かす

佐久間建設工業(株)
三島町大字早戸字湯の平687(TEL 0241-52-3111)
企業組合に参画、指定管理者に
 只見川流域で、只見川や温泉、周辺の自然、電力ダムなど既存資源の可能性を地域づくりに結びつけようという取り組みが注目されている。「建設業イコール第2次産業」の枠から一歩踏み出し、せっかくある地域資源に光を当て、観光など他産業との連携から活路につなげている。
 三島町の早戸温泉「つるの湯」は、町が温泉をリニューアルし、16年4月に新たにオープンした。同町の佐久間建設工業(株)(佐久間源一郎社長)が施工し、指定管理者制度で佐久間社長自身も専務理事を務める企業組合が運営している。
 「つるの湯」は、地域が共有する掛け流し薬湯の源泉で1200年の歴史がある。一手に管理していた湯守が高齢化して存続が危ぶまれていた。地域住民はこの源泉を町に無償譲渡し、町営の入浴施設として整備された。建築された温泉施設は、特産の三島桐も床材に使うなど古民家風に仕上げられ、風呂場からは只見川を近くで見ることができる。
 指定管理者制度として施設の運営を委託されたのは、温泉施設実現に奔走した隣接地の佐久間建設工業(株)・佐久間社長らで構成する企業組合。地区の有志16人と同社が計970万円を出資、経営方針を練りながら施設内の充実を図った。コンセプトは「心と体の湯治場」。テレビで紹介されたこともあって大盛況で、初年度から黒字を出し出資者への配当も実現した。
 また、只見川遊覧船「つるの湯丸」の運航も開始した。屋形舟の運行は県の地域ビジネス創出支援事業に採択され、中古の屋形舟を購入・改修した。10人以上の乗船客がいる場合に、不定期で運行する。温泉を発着場に、川を下り三島町宮下方面と、川を上る金山町水沼方面に約10kmを遊覧する。山間を流れる只見川からの風景や、川面に映る優雅な景色を楽しめる。料金は60分で1500円。
 地域ではこのほか、川周辺の地形をそのまま生かし、標高400mから640mの高台から只見川、遠くは磐梯山まで眺めることができる遊歩道、冬はクロスカントリーコースとして使えるトレッキングコース整備を柱とする「只見川キャニオントレール構想」が計画されている。流域市町村で構成している只見川電源流域振興協議会も、豪雪・過疎・高齢化といった共通課題を抱えており、地域の主力産業を続けている建設業も加わっての産業創出に、支援策を練っている。
 定住・2地域居住の受け皿作りをはじめ、創意と工夫で地域の活性化に取り組む自治体が全国各地で増えている中、只見川流域では、「つるの湯」をはじめ只見川渓谷の大絶景を資源に、建設業+異分野で、地域の主要事業としての歩みを始めている。

 
(写真は只見川沿い温泉の目の前を遊覧する「つるの湯丸」)
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