付加価値の高い夏秋いちご栽培事業

佐久間建設工業(株) (TEL 0241-52-3111)
 三島町の佐久間建設工業(佐久間源一郎社長)は、付加価値の高い夏秋いちごの栽培事業で農業分野に進出した。同地域は農業特区に指定されていないため、農業生産法人「(株)奥会津彩の里」を設立し、平成19年7月から本格的な生産供給を開始している。なお、同事業は平成19年度国土交通省における「建設業の新分野進出モデル構築支援事業」に選定された。
1.農業分野進出の背景
 地方の建設業界は公共事業の削減等で劇的なまでに縮小し、建設業界に強く依存していた奥会津地域の経済や雇用にも影響を与え、混迷を深めている。
 そうした状況を打破し、低迷する地域経済の活性化の一翼を担えればと発起し、いちごプラントを建設した。

2.農業生産法人「(株)奥会津彩の里」の設立
 いちご栽培地の金山町太郎布高原は農業特区に指定されておらず、佐久間建設工業としての参入は不可能であったため、平成19年4月に農業生産法人「(株)奥会津彩の里」を設立し、代表取締役に佐久間秀夫氏=写真下=が就任した。

代表取締役 佐久間秀夫氏


 約6町歩の農地に300坪の巨大ビニールハウスを2棟建設し、1万6000本の苗を定植して7月下旬から翌年1月まで毎日出荷を予定、約2000万円の売上げを見込んでいる。常勤従業員2名、パート雇用5名体制で行っている。

ビニールハウス

ビニールハウス
3.夏秋いちごの栽培で差別化・集中化
 夏秋いちごの栽培は、現代日本の農業においても未開発の分野。国内生産はほぼゼロに近く、ほとんどを外国からの輸入に頼っており、その総輸入量は2万トンに達している。しかし、鮮度保持のため防腐剤等が使用されているため、食の安全の観点からも国産の栽培技術確立が待望されている中、夏秋いちごを本格的に生産するのは全国でも希少なケースになっている。
 従来難しかった温度管理等も、夏秋用に改良された「いちご苗(咲み苺)」や「高設土耕方式」の採用でクリアするとともに、夏秋いちごの絶対条件と言われる高地低冷の気象条件を奥会津の太郎布高原(海抜約630m)は理想的なまでに満たしており、奥会津高原だからこそ高品質の夏秋いちごが栽培でき、他地域では容易に栽培できない地域限定の特産品が誕生した。

いちご
4.販路の確保と生産拡大
 販売については、国内の生産市場がほぼゼロに近いため、既存の商品と競合せず、通常の2倍程度の高額で安定した状態が見込まれている。
 実際の販売ルートは、いちごプラント施設の建設やいちご苗の販売を行っている取引相手(仙臺農研)が一括購入することになっているものの、有利な条件で近隣に販売することも可能。
 夏秋いちごの主な販売ターゲットは、その価格特性からして、観光農園や一般消費者向けのものとしてではなく、ケーキ店等を主販売先としている。  初年度の1日あたり出荷量は約100トレイだが、当面の目標を1日約200トレイとする方針。

5.今後の展望と地域貢献
 農業分野への進出は、親会社である佐久間建設工業の経営資源である重機、人材、施設の維持管理や除雪業務ノウハウ等も受託業務として生かせるとともに、新たな収益源の確保にも繋がる。
 6町歩の農地は、いちご栽培の生産拡大にも十分に対応できるものであり、将来的にはその規模を10倍程度まで拡大し、同地域を夏秋いちごの一大生産地に変貌させる考え。建設業以外に民間雇用が皆無に近い同地域にとって、規模拡大が具現化されれば、地域の経済活性化と雇用確保に大きく貢献するものと期待されている。
 農業生産法人「(株)奥会津彩の里」の佐久間秀夫社長は、「農業分野は初めてのことで戸惑いもありますが、毎日高品質なものが出荷できるよう研究を重ねています。地元企業として生きてきて、建設業とは別の意味で地域貢献と雇用の創出ができればと考えています」と抱負を示している。

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