除染技術で実証実験
SSP用いて浄化・減容化
福島市 (社)福島県建設業協会
県土の復興には除染が必要不可欠-。
福島県建設業協会(小野利廣会長)は県民が安心して暮らせる環境を取り戻すため、除染工法の実証実験に取り組んでいる。
県が公募した除染技術実証事業にクマケン工業(秋田県横手市)との連名で申し込み、「放射性物質用凝集剤を用いた土壌の減容化技術」「放射性物質用凝集剤を用いた除染工法(プール・ため池等汚染水浄化技術)」の2つの技術が実地試験の実施技術に選定された。
東京電力福島第一原子力発電所の事故で拡散した大量の放射性物質による環境汚染で、今なお多くの県民が避難生活や不安な日常生活を強いられている。「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(放射性物質汚染対処特別措置法)が平成23年8月に成立し、平成24年1月1日に本格施行。国では、福島第一原発の警戒区域と計画的避難区域の指定を受けている県内の11市町村を「除染特別地域」と「汚染廃棄物対策地域」に指定し、直轄で除染や廃棄物の収集・運搬・管理を実施する。また、原発事故を原因とする放射性物質の汚染状況を調べる「汚染状況重点調査地域」として102市町村を指定。指定を受けた市町村は国の費用負担で放射線量を測定し、毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域を対象に除染実施計画を策定し、除染作業を行う。
川俣町での実証実験
クマケン工業の除染技術は、金沢大学の太田富久教授と共同研究開発したスーパーソリウェルパウダー(SSP)を用いて土壌や水から放射性物質を取り除き、安心安全な生活環境を取り戻す工法。
土壌減容化の技術は、除染作業に伴い発生する除染除去物、特に土砂・汚泥等を淡水で洗浄し、清浄土と洗浄廃液とに分ける。回収された清浄土は埋戻し・敷き均しまたは一般残土としての処分が可能となり、洗浄廃液についてはSSPで凝集処理し無害な上澄液と放射性汚泥に分離することで除染除去物の減容化を図る。
今後、本格的な除染を進める上で、作業に伴い発生する除染除去物の仮置き場の確保が課題となっており、同技術を用いて土壌等を減容化し、仮置き場の受け入れ能力を向上させることが、地域全体の除染作業を促進させることにつながる。
一方、プール・ため池等汚染水浄化技術は、除染作業すらできずに貯留されている学校・公共プール施設や、農業用ため池等の汚染水が対象。SSPを用いて浄化することで確実に放射性物質を回収し、事故以前のような安全な生活環境を回復する。
平成23年8月には同協会各支部から約60社が参加し、川俣町の町立富田小学校で放射性物質土壌の除染実証実験を行った。作業は、クマケン工業の協力の下、川俣町建設同業会加盟各社が実施。放射能汚染土壌・汚染水の処理方法や作業の流れについて説明が行われた後、グラウンドに設置したプラント設備を使用して、汚染土壌の除染作業を進めた。
福島市大波での実証実験
除染前の汚染土壌の放射線量は毎時約2.7マイクロシーベルト(以下単位はすべてマイクロシーベルト/毎時)で、除染後の洗浄土の放射線量は約0.4~0.5と線量低減が図られた。また、SSPを使用した今回の処理方法では、プラントに投入した汚染土壌のうち約75~80%を再利用できる洗浄土とすることが可能。残りの約20~25%は放射性物質の圧縮された高濃度の脱水汚泥(放射線量約5.2)となるが、保管場所の縮減も図られる。
また、12月には福島市大波字寺前地内の椚町防火貯水槽で「プール・ため池等汚染水浄化技術」の実地試験を行った。
作業は防火貯水槽の近接地に設置した汚染水処理プラント設備を使用して実施。汚染水約60tを貯水槽から処理プラントに揚水し、浄化装置にSSPを添加して放射性物質を凝集処理。放射性スラッジの脱水後、処理されて無害化した上澄水は排水し貯水槽に移送した。脱水汚泥(放射性廃棄物)は仮置場に保管した。
目次へ