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地元建設業が新たな連携構築
除染・がれき処理・仮設住宅建設・解体など
南相馬市 南相馬市復興事業協同組合
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東日本大震災直後の福島第一原子力発電所の事故で、原発から半径20km圏内は警戒区域、30km圏内は緊急時避難準備(当初は屋内退避)区域が設定された。南相馬市は20km、30kmエリアに分断、さらに計画的避難区域や避難勧奨地点(ホットスポット)が設定されるなど複雑な制限がかけられた。被災地に残った建設業は地元の力を結集して南相馬市復興事業組合を設立、がれき処理や仮設住宅建設、除染、解体・応急修理などを共同受注する新たな協力体制を構築した。
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南相馬市の原町区南部、小高区の住民は警戒区域に指定され、全住民が避難。原町区の住民もほとんどが一時的に山形県や新潟県などに避難した。震災後、地元建設業が開始した道路などの啓開、行方不明者捜索のためのがれき撤去は難航を極めた。残った建設業者は行政や警察の指示で捜索、復旧作業に参加したが、あまりに大きな被害であり、多くの従業員が避難していることもあって、会社単独での対応に限界を感じていた。
発災からひと月も経たない平成23年4月7日、南相馬市建設業組合(関場啓組合長)と県建設業協会相馬支部(草野清貴支部長)は、震災復旧を図るため団結し、南相馬市原町区の建設会館に「南相馬地区災害対策室」の設置を決めた。県土地改良建設協会相双支部(田中清一郎支部長)、県森林土木建設協会相馬支部(石川俊幸支部長)も参加した。県建設業協会双葉支部も連携を決め4月20日過ぎから始まった自衛隊と警察による大規模な捜索に参画した。
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南相馬市原町区での行方不明者捜索 |
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沿岸部の広範囲にわたる自衛隊、警察による行方不明者捜索への協力、また、がれき処理は道路や橋が流出した状況の中での作業となった。行方不明者捜索のため、がれきを撤去する重機やダンプなどの通路、最低1車線を確保する道路応急復旧、車両の運行計画は地元建設業の経験と連携が不可欠だった。携帯電話など通信網が復旧しておらず連日、早朝と夕方に行政と直接打ち合わせをし、その後、建設会館に集合して作業工程の確認と人員配置を繰り返した。
5月12日には南相馬市内の本格的ながれき撤去のため、市内の鹿島・原町・小高の建設業組合が南相馬市復興事業組合を設立し、南相馬市に建設工事入札参加資格審査申請書を提出した。組合長は関場啓氏。事務局を南相馬市原町区の建設会館に置いた。共同事業の体制が形になった。
南相馬市原町区の東生涯学習センター駐車場で5月26日、災害がれき撤去・運搬活動安全宣言大会を行った。同事業組合は、同月、南相馬市から震災被災者の失業対策事業2件を受託、災害復旧、地域の復興に向けた作業も始まり、鹿島区内で道路等災害個所と農業用施設被災個所の清掃を担当した。
7月には東京電力の要請を受けて福島第一原発から半径20km圏内の家屋、納屋などの屋根の補修に着手。安全研修会を開いて放射能対策などを研修し、警戒区域に指定されている南相馬市原町区の一部と小高区で、東日本大震災で損壊した屋根を補修し台風シーズンに備えた。
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安全宣言大会 | 20km圏内屋根修理 |
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南相馬市は8、9月を除染強化月間と位置付け、学校施設と公園の除染作業を組合に委託、幹事が各施設の作業担当を割り振り、鹿島区の通学路から除染作業に入った。8月25日からは緊急時避難準備区域の指定解除を視野に、原町区の小中学校でも作業を開始した。
一方、9月には自家用車による警戒区域一時立ち入りを前に小高区内の道路応急修繕を実施。10月には被災農林施設等安全確保業務を委託、緊急雇用創出事業に協力した。11月には除染作業に向けて放射線基礎講座を開催、実際に測定実験を行って放射線の特徴に理解を深めた。
年明けの平成24年1月16日には、南相馬市の特定避難勧奨地点で組合による除染実験を開始。4班(庄司建設工業班、東北建設班、関場建設班、石川建設工業班)を編成し、高圧洗浄機による屋根の除染、雨どいの洗浄、庭などの表土除去、樹木の剪定・除草を実施した。加えて、除染による汚染水対策とし、同市の庄建技術が研究しているもみ殻によるセシウム吸着実験も組み込んだ。
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住宅除染実験 |
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本格的な共同受注体制の構築に向け協同組合の設立が検討され、1月27日には南相馬市復興事業協同組合として創立総会を行った。事業計画では、砂や砕石、除染資材等の共同購買する。また、南相馬市が発注を予定している市内の住宅・宅地・道路除染を大手建設業者と協力体制を構築し、地元業者の共同受注を図る。道路の維持管理業務、災害時のパトロール・応急復旧の共同実施体制の研究を開始した。
南相馬市は「除染作業および除去土壌等の保管管理業務委託」の受託者として竹中工務店・竹中土木・安藤建設・千代田テクノル共同企業体を選定、今年度分の契約額は230億円(消費税込)。旧警戒区域、計画的避難区域を除く生活圏の住宅や事業所を除染し、除染で発生した土壌等を国が設置する中間貯蔵施設が完成するまで仮置き場で保管、管理する業務を同協同組合は共同企業体と連携して着手している。
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