2012
ゴルフ練習場を経営
震災被害の施設を引き継ぎ


伊達市 森藤建設工業(株)
(TEL 024-575-2524)
 東日本大震災で被災し、甚大な被害を受けた伊達市保原町中瀬字日の出地内のゴルフ練習場。東京電力福島第一原子力発電所の事故も相まって、当時の練習場オーナーは事業からの撤退を決めた。そのような状況の中、同市の森藤建設工業(森藤忠嗣社長)が経営を引き継ぎ、施設に大規模な修繕を施し「だてごるふ練習場」として営業を再開。平成24年12月には福島県建設業新分野進出企業の認定を受けた。
 東日本大震災により、クラブハウスが半壊となるなど建築物に大きな損傷を被ったほか、練習場内の野芝部分や駐車場内に大規模な亀裂が発生し、その亀裂部分から水が噴き出すなど被災当時の状況は深刻だった。加えて原発事故が追い打ちをかけ、前オーナーは事業の継続を断念。それを聞きつけた森藤社長が、雇用や娯楽産業の喪失、ひいては地域社会の衰退につながりかねないと懸念し、平成23年4月に前オーナーから経営権の譲渡を受け事業を引き継いだ。

復旧した現在のクラブハウス
復旧した現在のクラブハウス


最大距離270ヤードの練習場
最大距離270ヤードの練習場


 同年夏には本格的な施設の修復作業に着手し、同年9月に11万5000㎡の用地取得も完了。同年10月に改修や修繕工事、野芝の張り替えが完了し、「だてごるふ練習場」としてリニューアルオープンを迎えた。打席数は1階、2階部分を合わせて約60打席。打席からの最大距離は270ヤード。
 同社による練習場の事業再開で、既存従業員2人の雇用が守られたほか、新規に2人の従業員の雇用が創出され、シルバー人材センターからも必要に応じてパート従業員を受け入れるなど地域の雇用確保にも寄与している。震災・原発事故による避難者に対しては、会員と同待遇での施設利用が可能となる支援を行っている。同練習場が企画・実施している「絆コンペ」では、仮設住宅で暮らす避難者らを交えて競技を行い、スタッフ、地元会員らとの交流にもひと役買っている。
 また毎月第2、第4日曜日には、小学生らを対象としたプロのインストラクターによる無料のジュニアレッスンスクールを開催。避難者や地域の幼稚園児、知的障がい者らを招いての無料招待プレーも行うなど地域に開かれ、貢献する施設運営に努めている。

1階の打席
1階の打席


 森藤社長は「雇用や地域の娯楽産業が失われることを避けたかった。リニューアルオープン後は、仮設住宅等で暮らす避難者向けの支援、絆コンペの開催など交流の場を提供できた。今後も地域活性化の一翼を担う施設としての経営・運営を継続していきたい」と抱負を語る。
 同練習場の長沢友子副支配人は「震災直後は、あまりの被害の大きさに、これで職を失ったと覚悟したが、同社が経営を引き継いでくれ感謝している。また施設復旧時には地元建設業者ならではの迅速な対応、人手や資材の手配などが心強く、事業再開に向けて同社社員らと共に汗を流した時間はかけがえのないものだ」と当時を振り返った。

クラブハウス内
クラブハウス内


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