毎年80社以上が生徒を受け入れ

高等学校建設関係学科の現場実習
社団法人福島県建設業協会
福島市五月町4-25(TEL 024-521-0244)
■平成4年度から毎年実施■
 社団法人福島県建設業協会では、平成4年度から福島県内の建設関係学科に学ぶ高校生の現場実習を受け入れている。
 建設関係学科を有する高校では、生徒に在学中から職業体験をさせて、職業としての建設業に理解を深めさせることが目的。進路を考える際にも役立ててもらおうという試みだ。各高校は、生徒の受け入れを建設業協会に要請し、同協会は県内全域に存在する会員企業の現場や社内設計室などで実習を行っている。
 県内には、建設関係学科を有する工業高校や農業高校が、県立と私立を合わせて15校あり、このほとんどで毎年、現場実習を行っている。2年生を中心に300名程度の生徒が6月から11月の期間に現場実習を行っており、これを受け入れる会員企業の数は80社から90社に及ぶ。1社あたり3~4名を指導している。
 この取り組みが始まった当初は建設事業量が多く、実習を行う現場にも事欠かなかったが、事業量が大幅に減少した現在では、実習先を確保する事自体が大変になってきている。
 それでも、会員企業は「将来を担う若者を育成しよう」と、今年度は12校から約320名を受け入れる計画。実習は3~5日間程度。実習に先立って、各高校の教科担任らと実習を行う先の現場代理人らが打合せを行い、実習の内容や安全対策などについて確認、実習の内容を調整する。実施期間中には、担当教諭が実習先を巡回している。
■現場の先生が心構えを伝授■
現場で鉄筋の量について説明する代理人
現場で鉄筋の量について説明する代理人


 建築工事の現場実習におじゃました。現場代理人は、4人の実習生に工事概要や施工管理の進め方について、現場事務所で図面を拡げて説明を行い、作業が進む現場に連れ出す。工程は、生コン打ち込みの真っ最中だ。
 ベテランの代理人は「あれが、耐震偽装問題の発端になった鉄筋。この量は図面に記されており、私達はそれを忠実に施工している。だけど、もし鉄筋量に疑問を持ったら設計者に言わなければいけないんだよ。それが現場を預かる者の責任」と仕事に対する姿勢を示す。巡回していた教科担任の教諭も「教科書に書いてあることだけでは、現場は進まない。仕事をしている人の話を聞くことは、君たちの財産だね」と語りかける。

教科担任教師による巡回指導
教科担任教師による巡回指導


 また、「この仕事は段取り勝負。確かな技術力を持って工程を理解することは基本だけど、現場で働く人達への目配り、気配りで現場の雰囲気は良くも悪くもなる。これは、品質にもつながること」との指導に、生徒達は熱心に聴き入っている。
 事業量の減少により、地元建設企業の新規採用人数は振るわない。しかし、優秀な若者に建設業の魅力や役割を伝えることは、将来に向けて欠くことはできない-と高校と建設業界の関係者は語っている。
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