「尾瀬を源流とする伊南川の多様性回復とふれあい創造事業」
奥会津元気回復協議会
国土交通省の「建設業と地域の元気回復助成事業」第1次に認定


南会西部綜合建設工業協同組合(酒井秀明理事長)
(TEL 0241-72-2221)
 国土交通省が創設した「建設業と地域の元気回復助成事業」に県内から5件が選ばれた。国から最大2500万円の助成を受け、建設業の人材や機材を活用しながら地域の観光等で活性化を図る。南会津地域が進める「尾瀬を源流とする伊南川の多様性回復とふれあい創造事業」は、建設業のノウハウを生かしながら関係機関と連携することで、伊南川の多様な生態を回復させ、豊かな川づくりで観光・交流人口の増加にも役立てていく方針。
 事業主体は、南会西部綜合建設工業協同組合と南会津町、只見町、桧枝岐村、南会津西部非出資漁業協同組合、南会津観光公社、奥会津活性化委員会(星組、会津法面、新井組、伊南建設工業、大富土建工業、大正工業、舘岩工務所、美馬建設、山星建設、吉野建設、会津土建)の17団体で構成する奥会津元気回復協議会。
 尾瀬を源流とする伊南川の生物多様性の回復を図るために、河川整備や砂防工法の改善、森林保全などを含めた環境対策の具現化を研究する。また、流域の多様な地域資源を活用した観光・交流の誘客・集客対策の強化について研究する。今後アクションプランを策定し、事業の試行的実施を行いながら検証していくことを目的としている。
 実施期間は平成21年7月から平成22年12月までを想定している。
事業背景とその必要性
 伊南川は南会津地域を流れる阿賀野川水系の河川で、桧枝岐村の尾瀬を源にする桧枝岐川が舘岩川と合流して伊南川となり、只見町で只見川に合流する。急峻な山地の狭い谷間を流れる伊南川=写真左下=は、全国の鮎釣り師から桃源郷と呼ばれる清流を誇っていたが、護岸整備=写真右下=が進むとともに、森林の水源涵養機能の低下や全国的な冷水問題も加わり、鮎やカジカに代表される豊かな川としての機能が失われている

   


 このような中、地元建設業は、生態系の保全に取り組み、自然との共生を考えた新技術や手法の研究を進め、地域と行政が一体となった環境保全活動を活発化している。また、南会津町は地域活性化の起爆剤として観光交流への取り組みを強化し、「南会津やまなみ泊覧会」と称し、地域連携事業、エリア事業、友好都市交流事業を進めている。
 地域活性化を図るこれらの動きと連動し、建設業が持つ人材、技術やノウハウを活かした伊南川の生物多様性の回復と生態系の豊かな川づくりを進め、流域の地域資源を活かした観光交流を効果的に組み合わせ、観光誘客を拡大していく計画。
事業の流れと事業イメージ
 第1回ワークショップが平成21年8月22、23日の2日間、南郷総合支援センターで開催された。1日目は、地域ごとの見どころ、自然、観光、文化など地元ならではの穴場ポイントや歴史等が報告。2日目は「こうなったら川が良くなる」「川でこんなことをしたらおもしろい」といった川の戦略が議論され、伊南川流域の絵地図に、岩盤の滑り台などの川遊び、ラフティング場の整備、魚道づくり、写真コンテスト、ハイキングコースなど様々な提案がなされた。
 「いーな川活キックオフフォーラム」が9月20日、南会津町さゆり会館で開催。南会津町浜野地区在住の渡部力男さんが「昔の伊南川のお話~昔の川は魚がいっぱいで遊べたなぁ~」と題し、昭和30年代頃の伊南川を紹介。NPO全国水環境交流会理事長で多自然川づくり研究委員の山道省三氏が「多自然川づくりはこれからの常識に」、体験教育企画代表で土佐・龍馬であい博総合アドバイザーの藤沢安良氏が「ほんものの体験が必要な時代」と題し、それぞれ講演した。

 


 今後、12月に第2回ワークショップを開催し、アクションプランの中間取りまとめを行い、平成22年の第3回ワークショップでアクションプランの取りまとめ、平成22年12月に最終取りまとめとフォーラムイベントの開催を予定している。
 この間、伊南川まるごとリバーミュージアム川楽版を発刊し、事業経過を情報発信することにしている。
 事業イメージとしては、地域住民、専門家、行政、地元企業などの意見、提案をもとに、「多自然川づくり」では、〔1〕伊南川流域の現況把握、〔2〕生態系豊かな川づくり、〔3〕魚が住みよい川づくり-、「ふれあい創造事業」では、〔1〕流域資源の再評価・人材育成、〔2〕伊南川を活用した活性化事業、〔3〕地域の魅力を再発見、〔4〕歴史・文化等-を調査・検討し、地域の活性化に生かすことにしている。
期待される具体的な成果
(1)環境保全と観光・交流の両立を核にした様々な地域団体の連携と分担の仕組みの構築=異業種の連携を先導し流域ぐるみの環境保全と観光・交流の両立を目指した継続的な取り組み体制、プラットホームの構築。
(2)環境保全対策と連携した建設業の活性化=「多自然川づくり基本指針」に準拠した河川整備や砂防工法の検討、多自然工法の積極的な導入により、環境保全技術やノウハウが蓄積され、環境保全・創造業としての業界イメージ向上。
(3)観光交流の誘客・集客力の向上による地域経済の底上げ=観光・交流事業を通して、地域産業相互の連携促進、ビジネス機会の拡大、観光関連業の振興。
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