2012
大震災を経験し、新たな地域おこし
特別純米酒を製造・販売


石川町 (株)福産建設
(TEL 0247-26-3355)
 放射能問題による風評被害、除染など多くの苦悩を抱える福島県。東日本大震災の被害が比較的少なく、さらに放射線量も低く、中通り・浜通りのクールスポットと言われる石川郡を、県内外で避難を余儀なくされている県民の集団移住を可能な地とする。この斬新なプロジェクトを民間主導で達成することを目的とした団体「福の島を考える会」が、嶋影健一建築工房社長を代表として平成24年8月に発足した。石川地域に根ざした企業として福産建設(吉田一治社長)もプロジェクトに参画、同会の中枢を担い、建設業という立場から企画、提案を行っているほか、平田村で育てた酒米「チヨニシキ」を原料とした特別純米酒「あした、福の島」を販売し食の安全をPRするなど、地域おこしへの多種多様なアクションを起こしている。

新たな福島モデルの構築へ
 放射線被ばくを恐れ避難している県民は、小さな子どもを持つ家庭が多い。移住するにあたり食の安全、安心して子育てや教育ができる環境の充実は必須条件となる。この会は、ハード、ソフト両面でコミュニティ社会の福島モデルを目指すことを趣旨とし、メンバーは浦部智義日本大学工学部建築学科教授と浦部研究室の学生や、地元経済団体、幼稚園園長、金融機関など多岐に及ぶ。
 福産建設は、地域の清掃奉仕をはじめ、震災直後からいち早く石川町への避難者を対象とした支援イベントを開催するなど、社会貢献に対して積極的な企業である。また、嶋影、吉田両氏も設計者、施工者の立場で公共・民間工事とも古くから付き合いがあることから、社会貢献やまちづくりへの思いが人一倍強く行動力のある2人が意気投合するのは必然の流れであった。
 同会は、福産建設や石川町クローバー保育園などを会場に2ヶ月に一度のペースで会議を開き、幼児教育に関係するNPO、農業関係団体・企業などから講師を招いて講演や、意見交換などを行っている。平成25年8月23日に福産建設で開催された第7回会議では、石川郡に居住または通勤する母親に対して事前に行った子育て環境に関するアンケート結果を社員の遠野洋恵さんが母親代表として発表した。公園や運動施設、未就学児用の室内施設、小児科系の病院が少ない、道路が狭いなどの現状や、公共施設の開館時間延長、預かり保育の充実などが要望され、課題の抽出などアクションを起こすにあたっての土台作りも進めている。

酒米作りに学生ら参画
 酒づくりは、福産建設が平成23年度から進めている事業。酒米は平田村に住む吉田社長が所有する水田約50アールで作られ、同村老舗の若清水酒造で約1000本分が醸造される。会社で販売するにあたり、平田村から農業法人の認定を受けたほか、販売店登録のため社長自ら酒販責任者研修を受けるなど準備を進め、23年米を使用した新酒が昨年の平成24年に製造された。酒名は吉田社長らが、復興への願いを込め「あした、福の島」と命名した。

「あした、福の島」と研修受講証を手にする吉田社長
「あした、福の島」と研修受講証を手にする吉田社長


 平成25年5月31日に行われた田植えには、浦部研究室の学生はじめ、障がい者訓練施設の愛恵自立支援センターも参加。農業をテーマに開催された平成24年12月の第3回会議において、浦部教授から自給自足の食生活、学生から農家民宿などの提案が出されるなど、地域づくりプロジェクトを進行するうえで農業が重要なファクターであることをメンバーそれぞれが自覚しており、福産建設の取り組みを知った学生から、米作り体験を通して農業への理解を深めたいとの提案があり、吉田社長も提案を快諾、田植えから稲刈りまで体験することになった。

平成25年の田植え
平成25年の田植え


 吉田社長は、「福の島を考える会、社会復帰を目指して頑張る障がい者、地元の酒造店が協働で作り上げたこのお酒が復興への希望のひとつとなれば」と思いを寄せる。  特別純米酒「あした、福の島」は福産建設ホームページから購入できる。

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