県内発信の新技術

新発想の回転埋設鋼管杭『クロスパイル』

 郡山さく井工業(郡山市安積町荒井字橋郎治5-6、新田勝秀社長)は、住宅等の基礎工事において地盤を乱さない新発想の回転埋設鋼管杭『クロスパイル』を開発、特許を申請するとともに、全国展開へ向けて準備を進めている。
 『クロスパイル』は、杭先端の刃が従来の鋼管杭工法と大きく異なる。従来工法の鋼管からフィン等が張り出すタイプでは、杭を打ちこむ際に周りの地盤を乱してしまい、周辺摩擦力の低下につながる。『クロスパイル』はこの従来工法のマイナス面をカバーするため、90度角の特殊鋭刃2枚と、鋼管の中を閉塞させるため管径と同じサイズの蓋を含め3枚で杭先端部を構成。特殊鋭刃2枚は蓋の上下からクロスさせ固定、後は鋼管に溶接するというシンプルかつ汎用性を持った方式を採用した。

 これにより、従来の工法に比べ掘削の際に地盤を乱すことなく周辺摩擦力を強化し、打ち込まれた杭を強力に固定することが可能となり、「ぶれ・ずれ」を極力抑えた性能が確認されるとともに、廃土も出さないメリットも。また、回転埋設式のため騒音や振動も少ない。
 販売価格は、外径165.2mm、杭長6mの鋼管杭(STK400JISG3444)で1万5千円、刃先先端部のみで2千円に設定。
 また、すべての施工現場において沈下試験を行うとともに、生産物賠償責任保険20年間を保証している。
 これにより、①環境配慮(安心施工)②低騒音・低振動③経済的④信頼性⑤汎用重機施工・汎用性のある杭工事-という5つの特長が得られ、施主・設計者・施工者に満足感を与えられるものとなった。

安く、早く、良いものを
 開発にあたった新田社長は、「住宅用地の地盤調査を行う中で、約2割は支持力が不足し、基礎補強が必要と判断されている。また、「住宅品質確保法」の施行により、基本構造部分は10年間の保証が義務付けられたが、最近話題の欠陥住宅の事例でも、地盤沈下など基礎工事の不備を起因としたものが多い」ことから、杭地業分野への参入を決意。
 しかし、既存の鋼管杭工法では支持力、施工日数、コスト面等で一長一短があるため、「安く、早く、良いものを提供する」との方針のもと、昨春から技術開発に取り組んだ。
 「形が決まるまでに約2ヵ月かかった。その後、プレス会社と協議しながら製作作業に入り、載荷試験、保険契約、特許申請にかかる事前調査などを経て、10月に特許及び意匠を出願した。昨年末にパンフレットも出来上がり、施工及び販売は今年から具体的に進める」と説明。また、特殊鋭刃の角度については「当初は強度を考え120度にしたが、玉石等を排除することを考え、最終的に90度に決定した」とする。
全国展開へシナリオ
 新田社長は現在、『クロスパイル』の全国展開へ向け、シナリオを練っている。「本格的な売り込み前から問い合わせ等をいただいているが、当面は知人・友人等を通じて普及に努める。杭先端部のみの販売も行うため、運搬コストもそんなにかからない。全国展開にあたっては、取扱店の拡大だけでなく、将来的には製造に関しても県外に拠点を設け、対応したい」との構想を持つ。
 また、「全国展開にあたっては、協会を組織することも必要になる」とし、段階を踏んで鋼管杭工法のスタンダード化を目指す考えを示している。
 『クロスパイル』は一般住宅の基礎杭を基本とするものの、「ゼネコンから農業土木工事での活用に関しても問い合わせをいただいている」とし、『低コスト・高品質』が求められる現在の社会情勢の中で、”県内発新技術”の普及が注目される。
 『クロスパイル』に関する問い合わせは同社(電話024(947)1760)まで。
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