経営革新に取り組む企業
県外企業編1
 異業種企業と連携したビジネス展開
廃タイヤリサイクルから可倒式視線誘導標・車線分離標を開発
◆八紘(岡山県倉敷市連島町) 
舗装工事を主体にしてきた同社にとって、「公共事業だけではこの先食べてはいけない」と、この事態を予測していた平成10年頃、社会問題となったパチンコ台や廃タイヤの野焼き報道を見て、リサイクルに思い至ったのが開発の発端。
地元有力メーカーの倉敷化工と技術面で連携しながら、視線誘導標の外観の花部は、廃タイヤの粉砕チップ、特に花の頭の部分は車体を傷つけないよう、粒径1?3?角のリサイクル発砲粉砕ゴムを使用し、環境にやさしい商品化をめざした。
先に視線誘導標・車線分離標の材質ができたものの、ここで問題が発生。「難点の強度をどう克服するか」。同社の佐藤社長は、ここでも地元有力企業のモリマシナリーと提携し、本体基礎部分の研究開発を依頼。これまでのバネは伸びるとした固定観念を払拭し、圧縮スプリングを採用したシリンダの開発が可倒式支持装置として車両の衝突、屈曲に耐えうる製品化を可能にした。
現在、特許申請中で、岡山県の経営革新の事業としても170社の申請のうち承認された、12社に入る。建設業では同社のみ。大量に出る廃タイヤの活用を前向きに考え、「大手商社の勧めも断り、地元の活性化に」と地元企業と連携した。地元志向の企業が選択し、生まれた新製品可倒式視線誘導標・車両分離標「フラワーコーン」は、国土交通省、倉敷、岡山市での採用に続き、県の試験施工にも採用された。佐藤社長の挑戦は続く。
県外企業編
 ターゲットは「環境」
 ◆中村土木建設(愛知県東海市)
 愛知県東海市の中村土木建設(中村美由喜社長)は、資本金2000万円の地元中小企業。だが、市民のニーズに合わせた経営戦略により、時代を先取りした経営を展開しており、過当競争の激しい現在でも、着実に売上高を伸ばしている。
 受注する工事はもっぱら公共事業。前社長の時代までは、河川、宅地造成などの分野も手掛けていたが、今では受注高の70%が下水道。「住民のニーズにこたえていった結果、下水道工事が主体になった」と、中村義幸専務は言う。
 このため、技術開発にはことのほか積極的。難しい地盤にも適応する掘削性能を持ち、掘削状況を地上モニターで監視できるというロックマン工法なども、メーカーとタイアップして特許を取得した。
 10以上の技術団体に加入し、安くて工期の短い機械を共同でいくつか開発してきた。最近では、S?MAX工法を特許出願中。こうした新技術開発の成果を、発注機関に提案するという大手ゼネコン顔負けの技術集団だ。
 これからのターゲットは「環境」。下水汚泥をリサイクルし、屋上緑化の土にする技術も既に実用化した。増改築、介護商品、環境商品なども射程におさめ、たゆまず時代のニーズにあった企業変革を進めていく考えだ。
県外企業編
 公共工事で培った技術力生かし
 民間住宅基礎工事で受注拡大
 ◆伊田テクノス(埼玉県東松山市)
 伊田テクノス(本社・埼玉県東松山市、伊田登喜三郎社長)は公共工事が減少するなか、「セミパイル工法」「鋼管杭工法」などの新工法を導入し民間住宅基礎分野の受注を大幅に伸ばしている。
 97年度に導入し、受注高は4年間で10倍の5億8000万円、さらに2001年度は前年度比30%程度の伸びを見込んでいる。営業拠点も埼玉県伊奈町(基礎技術部)、千葉県松戸市、神奈川県厚木市、埼玉県所沢市に開設し国道16号線沿線をカバーできる体制を確立した。
 公共工事で培った技術力を民間部門で生かし、競合他社との差別化ができないかとの発想から新規事業に着手した伊田社長は「新設事業ほど軌道に乗せるのは難しい。だからこ優秀な人材を登用した。余剰人員対策では中途半端で終ってしまう」という。
受注対象となるのは99%が木造住宅の基礎部。埼玉県内だけでも100億円以上のマーケット。地盤調査から設計、施工、アフターケアまで一貫受注のケースでは住宅メーカーに対して20年の保証を付ける。品確法の施行も功を奏したが、収益構造を多角化することで経営ベースが拡大した。
 昨年店頭公開した同社の自己資本比率は41%。本年7月にスタートした5カ年計画では経営内容の充実が明確に打ち出され、特に経審点数(Y評点)の県内トップを指向する。
県外企業編
 従来の下請ではない「建設施工メーカー」を目標に
 ◆静岡西部建設(静岡県静岡市青木)
 最近はゼネコンだけでなく、専門工事業においても商社的企業が増え、受注には熱心でも「工事をやる会社」が少なくなっている。なるべく人も機械も持たない「身軽な経営」が主流になっていく中、全く逆な行き方で生き残りを図ろうとい企業がある。静岡市内に本社を置く静岡西部建設。土木工事を中心に完成工事高25億円、従業員数70人、土木Aランクの企業だ。主力である基礎工事、外構工事に磨きをかけ、得意分野の強化によって差別化を図っていく。また元請の場合も、下請の場合も、外注せず、直接施工100%を基本にしている。
梅原社長は従来の下請企業ではなく、基礎工事などに特化した建設施工メーカーを目指す方針だ。元請を自動車メーカー、電気メーカーのように組み立てラインで製品を製造、販売する会社とすれば、「わが社は製品ごとの部品を製造・供給する企業」と位置付ける。
 このためには、優れた技能工の確保・育成と重機の保有が大前提となる。新入社員は1年間、職業訓練校、静岡県建設学院で勉強させ、車両系建設機械など現場に必要な数多くの資格を取らせるなど、社員教育には、以前から力を入れている。
 「技術、技能を重視した経営は、建設業である以上当然のこと」とし、多くの企業が敬遠する「固定費の大きくなる重装備の経営」を選択した。「商社的企業が生き残るか、わが社のような企業が生き残るか。これは発注者側の考え方で決まる。何年か先には、結果が出るだろう」と梅原社長。
県外企業編
 独自の耐震工法で差別化
RC集合住宅には新提案も
◆矢作葵ビル(矢作建設工業)(愛知)
 「新築需要が低迷している中、これからはリニューアル工事はぐんと増える」という見通しから、矢作建設工業(名古屋市、山田文男社長)は平成9年、矢作葵ビル(藤本和久社長)の一部門としてリフォーム事業本部を設立させた。
 ジャンルは、戸建て住宅、集合住宅、工場、オフィスビルなど。事業の内訳は、戸建て住宅、工場、オフィスの増改築が約30%を占める。さらに、集合住宅の大規模改修が約25%、そのほかが45%程度だ。
 同社ではこの10月、既に特許を取得し、実用化している外付耐震補強工法「ピタコラム工法」の営業窓口として、同事業部をリニューアル事業本部に昇格させ、この分野での新たな展開を開始し、人材も投入した。
 東海大地震の発生が確実視される今、耐震基準が緩やかだった昭和56年以前に建てられた学校や病院をまずターゲットにしている。さらに同工法は、鉄筋コンクリート造の5階建て程度の建築物に適しているため、古い集合住宅に適用できれば市場は大きい。
 同社では、ピタコラム工法による耐震補強のほか、これまでも展開している民間集合住宅でも、キッチン、ふろなどの各居住空間の新しい在り方についてユーザーに提案し、他社との差別化を図っていくという。
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