職人の知恵でU字溝反転機構具を開発
作業員の高齢化対策や効率化に期待!
二本松市の(有)木村左官工業
 土木工事の現場は、一般的に労務集約型の仕事が多く、作業の中には人力で行うものも多い。側溝工事におけるU字溝の設置もそのひとつで、特に重量物である成型品を反転させる作業は、現場作業員にとって大きな負担となっています。
 こうした作業を改善しようと、二本松市の(有)木村左官工業(木村廣喜社長)は、2年前から「U字溝成型品の反転機構具」の開発に取り組んできましたが、県が今年度認定する中小企業創造活動促進法に基づく研究開発に選ばれ、平成15年2月をメドに製品化する運びとなりました。
 同社は、今年8月までに設計・施策を行い、9月から強度や安全性さらに技術目標の研究に取り組む計画です。
 側溝工事におけるU字溝成型品の反転作業は、反転側に古タイヤなどの養生材を置きテコの原理を利用して人力(三人程度)で行う方法が採用されていますが、危険度が高く作業効率も低い上に成型品が欠損しやすいなど難点があります。これまでにもクレーンに電動狭持機構をつけた反転機械は製品化されましたが、大変高価であるため普及には至ってはいません。しかし、土木作業員の高齢化や若年入職者の確保難という現実があり、現場サイドでは作業の効率化や高齢者でもできるような形への作業改善が強く望まれています。
 同社にとって開発のきっかけとなったのは、平成12年1月に下請けした生活基盤緊急改善工事。重量六百キロのU字溝を約300メートルにわたって布設する仕事でした。現場から700メートル離れた場所にU字溝を仮置きし、そこからユニック車を使って積み込み移動、布設することとなったわけです。しかし、従事者の高齢化などから人力によるU字溝反転作業は大きな負担となるため、その打開策として簡易な反転機構具の開発、試作を木村社長は決断しました。
 試作したのは、H型鋼を使ったコの字型フレームに手動で使う狭持機構を取り付けたもの。構造自体は単純ですが、吊り上げ状態で反転させるための回転軸の割り出しや調整が課題となったそうです。
 アイディアを考えていた木村社長は、自宅でティッシュペーパーの箱に両側からボールペンを差し込んで試し吊りをしながら重心を探っているうちに、箱が反転するポイントを発見、これを応用して試作機をつくり現場で試したところ見事に成功。これに関する特許も取得し、独自に研究を続けていた中で、創造技術研究開発費補助金制度を知り、県の県北地方振興局や産業振興センターを通してシルバーブレーンの渡辺正氏(ワタナベ経営コンサルタント事務所)の指導を受けながら手続きを完了しました。
 今後は、ハイテクプラザなどの協力を受けながらU字溝の数多い規格への対応や反転機構具の規格別に可能や器具・部材の軽量化に取り組み製品化を目指します。
 今回の認定に関して木村社長は、「苦しい状況の中、チャンスを活かして苦境を乗り越え、会社の売り上げはもちろんですが、同業他社における作業の効率化に貢献することができたなら、そして一人でも多くの雇用の手助けになれれば最高の喜び」と語っています。

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