労働災害を撲滅し、安全文化を創造する
地域中核企業が連携してCOHSMS導入
いわき地区建設業安全衛生連絡協議会の13社
■いわき地区建設業安全衛生連絡協議会メンバー■
堀江工業?、?加地和組、錦興業?、?三崎組、福浜工業?、鈴木工業?、林興業?、?常磐開発、クレハ建設?、山木工業?、?渡辺組、?吉多美工業、東部産業?
■新たにマネジメントツールを開発■
組織的な取り組みは福島県内初の事例
 「労働災害を撲滅し、安全文化を創造する」ことを目的に、いわき市の中核建設企業13社で構成するいわき地区建設業安全衛生連絡協議会は建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)を導入し、積極的に安全衛生水準のレベルアップを図っている。このほど、システム構築の標準サンプルである「仮称Iwaki03・COHSMS(イワキ・ゼロサン・コスモス)」を開発した。協議会では、平成13年からCOHSMSを導入するための独自の取り組みをスタートさせ、 2年半かけて会員間で共有化し活用できるマネジメントツールを開発。この取り組みは安全レベルを向上させるために建設企業が連携してCOHSMS導入に取り組んだ県内初の事例として注目を集めている。
■提出書類や危険要因データを集約■
 協議会は「安全に企業間の垣根はない」という共通認識のもとで安全衛生管理活動の情報を共有化することを柱として、平成 3年に地元の労働基準監督署・労働基準協会・建設業労働災害防止協会福島県支部いわき分会の指導・支援を受けて発足した。いわき地区の建設企業全体における安全衛生水準のレベルアップを図ることを目的として、これまで「情報の共有化」を理念として安全意識の高揚および安全管理技術の向上に努めてきた。
 COHSMSを導入するためのシステム構築にあたっては、堀江工業株式会社の大庭憲夫安全課長が中心となってマネジメントツールの開発作業を進めてきた。その結果、「元方指針」に定められている安全管理などの責務に関する項目を新たに開発し、標準サンプルとして安全管理提出書類およびフロッピーディスクにまとめた。
 また書類関係については、これまで各企業がばらばらに作成してスムーズな安全管理の把握に支障をきたしていたものを統一し、共通の「安全衛生管理規定」「安全衛生委員会規定」「災害防止協議会規定」を作成するとともに、「社内パトロール要領・災害検討(再発防止対策)書」「関係請負人の評価判断基準表」などを明らかにするために文書化した。協議会の大きな目的の一つである「企業間における情報の共有化」については、発足当初からの会員企業で発生した休業 1日以上の労働災害事例を収集・整理・分析し、「危険有害要因分類集計シート」および「危険有害要因の特定データ(工事別)」として取りまとめた。
 さらに、作業所のシステムで必要になる「全工期安全衛生管理計画書(安全マップ)」を作成し、発生が予想される災害は工事内容とともに変化することから、工事の初期・中期、工期段階における特定事項をそれぞれ記載できるようにしている。なお、特定した危険有害要因から判断した実施すべき事項には、その内容をより具体的に記載するためデータベースや建設業災害防止協会発行の「建設業における危険有害要因特定標準モデル」を活用して、記載欄を設けた。
■COHSMS導入は時代の要請■
安全なイメージが企業経営に貢献
 10月の16・17日に新潟市で行われた第40回全国建設業労働災害防止大会では、「COHSMS導入に向けて、いわき地区の取り組み」と題して大庭憲夫氏(堀江工業?安全課長)がその経緯と成果を発表した。


説明を行う大庭氏

その中でCOHSMS導入のメリットとして…
(1)安全衛生管理に必要な技術や知識など情報の確実な継承による関係者の人材育成
(2)安全衛生管理実務の組織的で効果的な実行
(3)建設企業にマッチした独創性に富んだマネジメントツールの開発
(4)各企業における安全衛生水準の連続的
(5)継続的な向上
(6)安全衛生活動に関する日常の地道な努力の成果が公平に評価される
(7)建設企業の健全な経営と信頼性の向上
以上をあげて、安全管理のレベルアップに有効であることを実証している。


第40回全国建設産業労災防止大会

 建設産業は野外作業というその特性から常に危険要因を含んでいる。しかしながら労働災害を発生させた時に課せられる指名停止や損害賠償、企業のイメージダウンなどダメージは大きなものがあり、そのマイナスの影響は企業経営を崩壊させかねない。労働災害を最小限にくい止めるには企業内で確立された安全衛生活動に自主的に取り組む必要があり、「P・D・C・Aサイクル」をベースとして危険要因をあらかじめ排除する手法のCOHSMS導入は時代の要請と言える。これからの建設産業は「安全で快適な作業環境」という新たなイメージが企業経営に大きく貢献することになるだろう。

※COHSMS=建設産業を対象とした労働安全衛生システム。
※P・D・C・Aサイクル=「計画、実施、評価、改善」の一連の過程を継続的に実施する安全衛生活動。
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