IT活用し企業連携
八光建設(郡山市)
■住宅の潜在需要発掘に挑戦■
 建設企業の連携・再編やITを活用した新たな取り組みを支援する建設業振興基金の「先導的・革新的モデル事業」に八光建設(株)(宗像剛社長・郡山市)の「地域間の企業連携による材料供給、設計施工管理システム体制の構築」が採択された。16年1月末の準備完了に向けて①市場調査、マーケッティング②WEBカメラを活用した遠隔地施工管理システムの構築③ホームページ、電子メールを活用したリアルタイム情報の提供④既存建築構造の調査手法の検討⑤解体手法の調査(壊す技術、壊さない技術)を中心に運用面の充実を図り、16年度以降事業化への道筋を固める。
 郡山市並木2丁目の内環状線沿いに、斬新なデザインの住関連情報基地「ラボット」がある。郡山市で創業、地元屈指の企業としての評価と実績を持つ同社が「郡山市の地場企業」として培った技術と顧客第一の経営哲学のもとに開設した「基地」には、地方から発信する建設企業のノウハウが凝縮する。
 公共工事の減少は不可避の情勢だが、東京都内の膨大な住宅・マンションリフォーム市場参入という、地域を超えた挑戦ともいえる。「優れた県産木材に光を与えながら地元企業の立場で建設産業の明日を見据える取り組み」を国土交通省の委託事業がバックアップ、新たな民間需要の開拓を支援する。
 技術開発責任者で常務取締役の園部好洋氏(技術士・日大工学部非常勤講師)は「安くていいものからワンランク上の"価値あるもの"にシフトするスタイルが受け入れられるかは未知数だが、システムを確認しながら事業化計画進めたい。システム構築に支援のプラスアルファは貴重です」と述べ、チェック&ゴウの慎重さの中に、建設産業再生への自負と地元企業としての地場産品への思い入れ、商品化、ブランド化への自信がみなぎる。
 「今後公共工事が増えることは考えられない。地元民間工事の競争はさらに激化、パイの取り合いになっている。郡山は東京まで新幹線で1時間15分、車でも早起きすれば日帰り可能な位置にある。考えて見てほしい。東京事務所のある港区だけでも人口約60万。郡山市よりはるかに大きいストック(需要)がある」という。
 テーマは「地域の枠を超えた新市場での住宅、マンション―の新築、リフォームの材料供給、設計監理システムの構築」。膨大なリニューアル期にある潜在需要、ブランド材となりえる豊かな自然の中で育まれた木材と建材、さらに健康と本物志向の新たな住スタイルの顕在化がベースに。これらと一体化した内装、家具、備品への関心の高まりなど潜在需要への働きかけにより新たなチャンスが生まれる提案型ビジネス展開だ。
 「不当な評価を受けている県産材、特に間伐材は例えば一流のヨナス・ボリン(スエーデン)など世界のトップインテリアデザイナーの手で付加価値が可能で、木材は生産地の山林の状態からWEBカメラで映像をプレゼンテーションしブランド化を図りたい」。
 ラボットを発信基地に、当面の事業エリアを東京事務所のある東京都港区に設定している。「企業連携」では、地域を最も良く理解し、密集地でのノウハウを有する施工会社である?園田工務店と、地域ユーザーに信頼され、「地元で支持される」意匠力を持つ山本哲也建築計画事務所、青島裕之建築計画事務所をパートナーに「壊さないで住む」生き方とライフスタイルを提案する。構造計画、設計には公共事業の経験が生かされる。「公共事業と地方(郡山市)での経歴は首都圏の顧客に安心と満足を提供することができる」と地方からの発信と郡山の優位性を説く。
 「IT活用、運用面の充実」のポイントはWEBカメラ活用による「遠隔地施工監理法」の導入。「ITの有効活用」ではリアルタイムの動画がもたらす質の高い情報が魅力的で価値は高い。建材の生態、育成から使用までを視点に現場を定置カメラ、移動カメラで撮影、ホームページ上に画像で提供する。
 来年度の受注目標は3億円。既に東京都内で木造2階建ての住宅を施工中で、この日もITの技術担当が上京した。
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