渡部産業のアグリ事業
土づくりから農業へ
建設業のノウハウ生かせ!
渡部産業のアグリ事業
 猪苗代町の渡部産業㈱(渡部寛規社長)の新分野進出事業が、国土交通省の「地域における中小・中堅建設業の企業連携・新分野進出モデル構築支援事業」に選ばれた。今回のモデル事業選定は、全国で42件、東北地区で3件、県内では渡部産業のみ。
焼却施設の前に拡がる畑に立つ渡部社長
■新たな雇用環境の整備■
 同社は、土木建設業を主体に土石採取販売業と産業廃棄物中間処理業(中間焼却処理、中間破砕処理)を行っているが、公共事業等の急激な縮小により建設業に投入している労働力が余剰傾向にあるため、新たな雇用環境の整備としてアグリ分野に乗り出すこととし、アグリ事業部を立ち上げた。土木工事と土石採取、廃棄物の中間処理で培った機械力や技術力を生かして新分野に挑む。
 渡部社長は「猪苗代は、観光と農業の町であり、社員の多くが農業に携わっていること、また、残土など建設副産物処理を進めるため、一昨年から大型の分粒機を導入して土づくりに取り組んできたノウハウを生かせる新分野の調査研究を進めてきた。(社)福島県建設業協会青年部が実施した北海道での事例研修にも参加し、農業分野での展開を検討した」と語る。これまでに地元のJAから技術指導を受けながら付近の農家とも連携し、安定した耕土の供給体制と栽培計画を整えた。
 ハウスに作付けするホウレン草は、年に4~5回の収穫が見込まれ、収穫時期には1週間に15名程度の雇用が創出される。また、休耕時期には、地域の米農家がイネの苗床として利用することも検討されているという。雇用確保と地域農家との連携が同時に進む形であり、地域密着度は高い。
■建設業の管理手法を生かす■
 事業実施にあたって、「これまでのノウハウを生かす場面が多い」と渡部社長は語る。
 「耕地整備やハウスの建設、さらに次の栽培計画の基礎資料となる記録などの書類作成は、現場管理のノウハウと同じ。また、PDCAサイクルの導入、さらにISO展開を行っている建設業のマンパワーは、安全対策や在庫管理にも生きる」という。
 今後、冬前に1棟230㎡程度のハウスを4棟建設し、ホウレン草の栽培を開始する。さらに畑に隣接する焼却処理施設で発生する廃熱の有効利用を具現化するため、水耕栽培等の研究も進める計画だ。
 土石採取事業の重機と技術力で農業にかかる土づくり、土木部門では現在の労働力や区画整理等における管理技術、産業廃棄物中間処理部門からは、焼却炉から排出される熱エネルギーの管理・再利用という社内のコラボレーションで取り組むアグリ事業というデザインだ。
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