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資源の循環システムを創造
廃棄物をエネルギーに
いわき市のトラスト企画
いわき市の電気設備工事会社・宮野電気興業㈱会長の宮野悦甫氏が取り組む廃食用油のリサイクル事業が、軌道にのりはじめた。
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宮野氏
別会社としてリサイクルを行う㈱トラスト企画を立ち上げ、いわき市内のスーパーや工場、社会福祉施設、さらに行政とも連携する「いわき食用油リサイクルネットワーク」を形成し、自らの技術力で廃食用油を精製、軽油代替燃料や切削油、洗剤等にリサイクルしている。
宮野氏は、電気工事業を営むかたわら、循環型社会に向けたエネルギーのリサイクルの研究を続けてきた。市場展開が見えてきたことから㈱トラスト企画を設立し、まず「天ぷら油は石けんや燃料などとして再利用できる大切な資源」として、リサイクル事業に取り組んでいる。
リサイクルネットワークを構築するため、社会福祉法人、リサイクル関係の協業組合、環境保護活動に取り組む民間団体、市民会議、そしていわき市役所などに呼びかけ、「いわき食用油リサイクルネットワーク研究会」立ち上げた。事務局を務める同社は、このリサイクルネットワークの要となっている。
「私たちの世代は、無い無い尽くしで育ってきた。戦後の物不足を経験している。高度経済成長期を経てモノが溢れる時代になったが、使えるものまで捨てられる状況でもあり、これを何とかできないか」と思っていたことが、リサイクルに取り組む動機だったと宮野氏は言う。
電気設備工事を30年営んできたかたわら、早くから廃食油を軽油の代替燃料等に精製する技術の開発に努めてきた。ネットワークが機能し始めたこともあって、受入量50キロリットル、一時間あたり800リットル、一日あたり4トンを精製できる食用油再生プラントもいわき市四倉に完成させた。

廃食用油精製プラント
いわき市内のスーパーなど量販店に回収ステーションを設けているほか、浜通り沿いでは北茨城から相双まで食用油の回収にあたっており、今後は、ニーズに応じて回収範囲を拡げる構えだ。専用の回収車には、自社で精製した軽油代替燃料を使っている。
「相双地区では、海や川の水質汚染防止に熱心に取り組んでいる漁業関係者やJC、婦人会が廃食用油の回収に協力してくれている。食用油再生の輪が全国に拡大することで、資源の再利用や環境保全の輪が加速し、より良い地域づくりに貢献できるものと確信する」と語る。平成15年度からは、経済産業省委託事業(環境コミュニティビジネス)に指定され、資源の有効利用と環境保全の検証を行っている。 |
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■混ぜれば廃棄物、分ければ資源に■ |
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トラスト企画の食用油再生(RVO=リサイクル・ベジタブル・オイル)は、専用の回収車で廃食用油を受け入れて受入槽へ。加温異物分離→エステル化反応→ラード、グリセリン分離→沈降→洗浄→静置→ろ過-の段階で精製を行っている。
回収した段階で、質の良い廃所用油はネットワークのメンバーである社会福祉法人に回し、障害者施設で固形石けんづくりの材料にするなど福祉分野とも連携関係にある。その他は、精製されディーゼルエンジンの燃料(軽油代替)や切削油、農業用の定着材(油かす)、有機肥料の促進剤、液体・粉石けん等に再生している。植物油であるため硫黄分がなく、環境面でのメリットが大きい。精製後の廃棄物はほとんどないという。RVOは、東京都のディーゼルガス排出基準をクリアするというテーブルデータも出された。

同社の廃食用油回収車
この軽油代替燃料は、自社の廃食用油回収車や重機、製紙工場内で使うフォークリフトなどで利用している。また、切削油は、植物油を原料とするものとして国内唯一のもので、鉱物性油に比べて、材質が固い材料の切削に向いており、特にミスト加工では差が顕著、水溶性があることから清掃が楽で、しかも価格は半分程度の状態にまで仕上がってきた。検証試験も順調で、年内には販売経路の開拓にもメドをつけたい-としている。 |
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■エネルギーの循環も考える■ |
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宮野氏は、電気設備工事に携わってきたことから、電気エネルギーへの変換にも意欲を燃やす。
軽油用発電機を活用し、RVOを燃料にコ・ジェネレーションを組み合わせて、工場等で活用するシステムを開発する一方で、いわき市の「まほろば計画」に従い、木質系バイオマスでガスを抽出し、それにRVOを助燃剤として使いカロリーを安定させる取り組みは、NEDOの審査を終えた。いわき市健康センターの給湯・電気エネルギーとして活用するため、具体的な整備に入る。
「今後は、こうした電気エネルギーをバッテリーで持ち歩き、広く活用していくことも考えてみたい」と、電気設備に携わってきた人ならではの“エネルギー循環”を考えている。 |
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