まずは“本業ありき”
パソコン教室開催で自社PR
二本松市の野地工業所

きっかけは…
~地域に根差した会社を目指す~

 公共事業が激減し、県内建設関係業者が民間事業への取り組み方法を模索する中、二本松市の㈱野地工業所(野地一司社長)は、自社のPRのため広く地域住民を対象にパソコン教室を開催している。
 同社は、20数年前に経理や在庫調整など社内管理のため本社のIT化を開始。時代の流れとともに社会のIT化が進む中、これに合わせた社員教育も積極的に行ってきた。
 昨年春に、同社が所有する住宅兼倉庫(重機置き場)の入居者が退室することになったことを受け、近年、頻発する建設重機の盗難事件を防止するため、「警備会社に頼むよりも、人が出入りする気配があった方が安全」という判断とともに、「地域に根差した会社として、主に女性を対象とした趣味の教室を開催することで、会社のPRができないか」という提案が上がっていたことが新事業のきっかけとなった。
 時を同じくして、県土木部が建設業新分野進出支援会議をスタートさせたことから、片平正子経理・情報部長が同会議に参加。講演者のアドバイスや共に参加した企業と情報交換を行いながら自社における取り組み体制を整え、「他のパソコン教室のように、マニュアル通りの教え方ではなく、実際にすぐ使えるパソコン教室もあったらいいのではないか」との要望を受けて、昨年11月に教室を開いた。


誰でも気兼ねなく参加できる雰囲気の教室内
■自社のノウハウを親切、丁寧に提供■
 事業実施会社名は「ハーモニー」。空いていたスペースにパソコン4台を設置して、片平部長と外部委託者の2人が講師を務め、知り合いなどを通じて集まった地域住民約10人に教えている。教室では、表計算、ワープロをはじめ、ホームページ作成、インターネットなどを教えるほか、趣味の講座で集まった女性たちには、様々な模様付きのスタンプを利用して、プレゼントカード作成や、オリジナルTシャツも作成、好評だ。週1回、夜に開いているこの教室の受講料は、材料代と菓子代など少額で、今後、ひと月に1回ほどの講義も開催する計画。
 また同社では、社内管理用ソフトを使用するよりも、「マイツール」「エクセル」を使用して、自社に必要なフォームを作成するほうが効率的で利便性が良い-として、独自に社内管理を行っており、地域の商店主などパソコン教室の受講生から要望があれば、このオリジナルソフトと、それぞれの使い方に合わせたフォーム作成のための指導料をセットで販売する。


事業導入を決めた野地社長と担当の片平さん

 野地社長は、「まずは、本業ありき。同社ではこの事業を“新事業”とはとらえていないが、地域に求められるコミュニケーションの場を創出し、受講者の皆様のご自宅などで設備の不具合が生じた時に、『野地工業所さんに電話をしてみよう』と思い出していただければ幸いだ。今後も、このようなPR活動を積極的に行っていきたいと考えており、今回の教室開催は、その足掛かりになるものと確信している」と意欲をうかがわせている。


趣味の教室で作成しているカード
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